約束の場所「アメリカ」
編集部:ちなみに、永田さんってどういう経緯で美容師になったんですか?
永田さん:もともとは高卒でキッチン用品やキャビネットを作る会社に入ったんですが、2年半くらいで脱サラして、20歳の時に転職して美容師になったんです。
編集部:え、脱サラ?じゃあ、そこから美容の専門学校に行ったんですか?
永田さん:実は美容室で働いてる人だと通信で資格が取れるんですよ。しかも、年に20日間だけ学校に行って、最終試験さえ合格すれば良いっていう。だから、美容室で働きながら通信で資格を取りました。
もちろん、通信課程だと3年かかるので、専門学校の2年よりも少し時間はかかってしまうんですが、周りよりスタートが遅れている分、働きながら取れる方が良いかなと。
編集部:じゃあ、美容室で腕を磨きながら資格を取ったと。
永田さん:そうですね。なので、初めのお店で5年半くらい働いて、そのあと名古屋とか銀座でも働いて渡米したという感じです。
編集部:そのアメリカを目指したきっかけは何だったんですか?
永田さん:きっかけは日本で最初に働いていた時にお客さんと交わした約束なんです。
編集部:約束ですか?
永田さん:その人は芸術家の方で、内閣府のプログラムに選ばれて、日本を代表して1年間アメリカに行ってた方なんですが、その人が1年後帰って来たら全くの別人みたいになってたんですね。人としての厚みというか自信が増していて。
編集部:オーラが変わっていたと。
永田さん:その時、この人をこんなにも変えたアメリカってすごいなって思ったんです。そしたらその人に「いつかあなたも行きなさい。そして、行くんだったら、絶対に勝負しに行きなさい。」と言われて、僕も「いつか必ず行きます!」って約束したんです。
編集部:なんかドラマみたいですね(笑)
永田さん:きっとアメリカで勝負している人をたくさん見てきたんでしょうね。だから僕は、まず日本でトップを目指して日本のトップとしてアメリカに行こうと決めたんです。それで、日本のトップはどこだってことで名古屋に行ったり東京に行ったりして、ここだというタイミングでアメリカに目を向けたというわけです。
執念で掴み取ったチャンス
編集部:それでアメリカに来たと。
永田さん:当時2011年で、僕が33歳の時です。
編集部:英語は大丈夫だったんですか?
永田さん:チンプンカンプンでした(笑) 必要なのは分かっていたけど、それまでやってこなかったのが英語だったので。そこで、アメリカでトップの日本人美容師のところへ行こうと考え付いたんです。それがアメリカでトップを目指す1番の近道かなって。それでアメリカ全土で検索してみたら、この人かなという人がロサンゼルスにいて、これだと。
編集部:何かがビビッときたわけですね。
永田さん:そこで、4日くらいかけて経歴とか想いとか何ができるかっていうのをブワーって書いて、その長文メールを送ったんです。
編集部:もはやラブレター(笑)
永田さん:そしたら5分後くらいに返信が来て、「若い人を育てるのが今の僕の仕事だと思ってるので、ぜひ来てみて下さい」って。
編集部:おお、すごい!
永田さん:でも、来てみて下さいってなんだろうと思って。旅行で来てみて下さいなのか、就職としてがっつり来て下さいなのか。なんとなく後者ではない気がしたんですが、とりあえず会いに行こうと思って来ちゃったんです(笑)
編集部:まさかの(笑)
永田さん:それで会いに行ったら「本当に来たの?」って言われて(笑)
編集部:向こうも軽い気持ちで来てみなよって言っただけで、本当に来るとは思ってなかったんですね(笑)
永田さん:でも来ちゃったと(笑)
編集部:(笑)
永田さん:でも、来てみて下さいって言った人が帰って下さいとは言えないなと思ったので、とりあえず2週間通いつめて粘り続けたんです。そしたら、最後の方には向こうもちょっと疲れてきた感じで「まだいるのか」って(笑)
編集部:もう完全に漫画とかで見る世界ですね(笑) いいって言うまで帰りませんみたいな(笑)
永田さん:それで最終的に向こうが僕の熱意に押されて、「いいよ」ってことで、一旦帰国してビザを取って戻ってきたという感じです。
編集部:執念でチャンスを掴み取ったと(笑)
結果を出せば認めてくれる社会
永田さん:その人は今の僕よりも色んなところを飛び回ってる人で、一つのところにいないんですよ。でも、他の従業員はみんなアメリカ人だから、英語でコミュニケーション取らないといけないじゃないですか。そこで初めて「いいよ」っていう言葉の意味が分かったんです。やれるもんならやってみろよっていう。
編集部:なるほど、挑戦的な意味だったと。
永田さん:英語ができない奴にアメリカ人のお客さんなんて当然まわしてもらえないわけですよ。日本人のお客さんも来ないし。だから、アメリカに戻ってきて2日間ずっと掃除しかしてなくて、「やばい、アメリカ生活3日で終わるぞ」って焦ってました。
編集部:なんとかしないとやばいと(笑)
永田さん:それで3日目にそのオーナーに電話して、外に営業に出る許可をもらったんです。それで日本人がいると噂の公園に行って、ママさんたちを見つけて、「すみません、銀座から来たばかりでお客さんがいないんですけど、タダで切らせて下さい」って。
編集部:向こうはどんなリアクションだったんですか?変な人来たみたいな?
永田さん:それが、声をかけた人に恵まれていたみたいで、「みなさーん、銀座から来た美容師さんがタダで髪切ってくれるそうよー」って色んな人に声をかけてくれて。
編集部:まさかのインフルエンサー(笑)
永田さん:それで、その人ともう1人来てくれた人を切ってあげたら、「永田さん、これはタダじゃもったいないですよ」って。ちょうどその人がママさん向けにメルマガを流しているような方で、そのメルマガに僕のプロフィールとかが載ったブログの情報と、僕が切ってあげたBefore / Afterの写真と、モデルを探してるみたいな宣伝を流してくれて。
編集部:展開がすごい!
永田さん:そしたら、そっから1ヶ月で50人くらいズラーッと来てくれて。
編集部:え、50人?いきなりゼロから?
永田さん:しかもその中の一人が、ママさん有名ブロガーみたいな人で。
編集部:もはや、わらしべ長者ですね(笑)
永田さん:それでどんどん人が来て。。。それまでサロンで誰よりも暇してて、「何してんだあの日本人」みたいな感じに思われていたのが、いきなり誰よりも忙しくなっちゃって。なんだあいつみたいな(笑)
編集部:あいつ一体何者なんだみたいな(笑)
永田さん:でも、切るスタイルもそれなりにできるようになると、お店のみんなも少しずつ協力的になってきて、英語も教えてくれるようになりましたね。
編集部:やはりアメリカだと実績を残すと周りも認めてくれるようになるんですか?
永田さん:それはありますね。たしか、何人目かのカットで、ショートのAラインのボブをバンって切って返したときに、全員の目が「お!」ってなって、あの瞬間だなっていうのがありましたね。そのあとみんな寄ってきてくれたので。
編集部:「さっきのどうやったんだ!?」みたいな。
永田さん:それまでは、やっぱりアジア人だから、年も下に見られてて、たいした技術もないだろって思われてたんですが。
編集部:そこで腕で見せつけたわけですね。
永田さん:そういう瞬間がありましたね。
僕も永田さんに切ってもらい、かなりスッキリしました!
心なしかイケメンに見えますね!笑 (ちゃいますね!)