ものづくりの祭典 Maker Faire Bay Area 2018 まとめ

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*この記事はJoseph Romaniさんからの寄稿です。

5月18日から5月20日にわたって『Maker Faire』(メーカーフェア) がウェストベイエリア、サンマテオで開催されました。

今日は会場の雰囲気や出展品などをご紹介できればと思います。

▼本記事の内容
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・メーカーフェアとは?
・会場の雰囲気
・参加者たちの紹介
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メーカーフェアとは?

メーカーフェアとは、科学、工学、芸術、パフォーマンス、工芸の各分野の「Maker (メーカー) 」が、個人や商用に関係なく、自分たちが作ったものを見せ合い、学んだことなどを自由に分かち合う場所です。

簡単に言うと、自分が作ったものをドヤ顔で発表し、賞賛し合う場。そして、作ったこと自体が尊いとされる場です。

中でもサンマテオは各地で開催されるメーカーフェアのフラグシップ、今年で13回目となります。始まりは2006年、ベイエリア。そこからニューヨークへ派生し、現在では東京、ローマ、深セン、台北、ソウル、パリ、ベルリン、バルセロナでも開催されています。

個人の発明に注目する企業が世界中から訪れ、ベイエリアの大手IT企業で働くエンジニアたちもプライベートで訪れるため、ビジネスの話に発展することもあるようです。

また、メーカーフェアは、企業よりも個人の出展が多いという特性上、どのようにモノをつくるのか? (編み物、服飾品、ハンダゴテ、3D Printer、プログラミング、迷路など) というワークショップも多く、子連れで訪れる家族が多いのも特徴の1つです。

例年の規模で言えばプロジェクト数は約1,200、来場者数は約12万5千人にも上るそうです。

Maker Faireについて | Maker Faire Tokyo

会場の雰囲気

IBMの量子コンピュータQ / Nintendo Laboの展示

Kuriというロボット / KickStarter (3D Potter)

Google AIY KIT Voice, Visionの販売、ワークショップ

会場には、最新ハードウェアの展示のみならず、自作のジャムやドレッシングを販売するファーマーズマーケットのようなブース、RITUAL CoffeeやDANDELION CHOCOLATEなど色んなお店が軒を連ねていました。

また、回転するとサメが泳いでいる様に見える遊具や、バンドのバックミュージックと合わせて自転車を漕いで発電するコーナーなど、子供達が楽しく遊べる展示物もたくさんありました。

参加者たちの紹介

今回の展示会で出会った興味深いハードウェアと、それを作った人 (主に日本人) についても紹介したいと思います。

骨伝導サングラス

これは、De Anza College, Electrical Engineering 専攻3年生のKentaro Tanakaさんの作品で、耳を使わず、骨に振動を与える事で音楽を聴くことができる「骨伝導サングラス」です。

骨伝導が難聴者に効果的である事を知り、今後自身で開発したいデバイスの足がかりとして骨伝導サングラスを開発しているそうです。なんと、栄えある「Maker Faire Editor’s Choice Award」を受賞していました!

Kentaroさんは、1年生の頃からMakerとしてメーカーフェアに参加しており、エンジニアからフィードバックをもらうことで開発に役立てているとのことです。今後の活躍が楽しみですね!

カサナビ

堀 洋祐さん アイディアや技術を重ね合わせ様々な作品を発明しています。手にもっているのはメインプロダクトの「カサナビ」。

GPSセンサーと地磁気センサーで現在地を把握し、目的地の方向に傘が倒れる装置です。ドラえもんの秘密道具「たずね人ステッキ」を彷彿させます。

過去には、ニコニコ動画で話題になったこともあるらしく、科学・技術部門でデイリーランキング1位になったこともあるのだとか。今回は日本からの出展で、普段はNHKの技術開発部で働いているそうです。

REFLO

20年以上の幅広いハードのR&D経験を持つMasahiro Mizunoさんと、Mechanical Engineerで現在はM2M Tech CampusにてMobile App Developmentの勉強をしているTakayuki Saitoさん。

メインプロダクトは「REFLO」という半田付けを炉で一括して行える自作小型リフロー炉。専用アプリを使い温度コントロールなどを行えるように開発されています。

クラウドファウンディングにも成功しているとのことです。詳細はこちらをご参照ください。

バキュームフォーミングマシン (真空成型機)

株式会社ラヤマパックの社長である羅山能弘さん。出展は今回で4度目。プロダクトは『バキュームフォーミングマシン (真空成型機) 』で、毎回反響があり、現在はハリウッドでも使われているとのことです!

原型があれば、3D形状のプラスチック型が高速で作成・コピー出来る装置です。プラスチックの軽量性、高速コピーの量産性。原型は粘土などでも良く、3D CADデータを用意する必要もないため、誰でも簡単に作ることができます。

IchigoJam

学生のKazuyuki Nakatsuくん (左) / Taro Kawaiさん (右)

IchigoJam』は手のひらにのせられる大きさの、プログラミング専用こどもパソコンです。IchigoJamという基盤にテレビとキーボードをつなげば、すぐにプログラミングを始められるそうです。

特徴として「BASIC」というプログラミング言語を採用しています。80年代のパソコンに使われていた言語で、レガシーなのですがシンプルで子供たちが最初に触れる言語としては最適だと思います。

子供たちのものづくりへの関心やICTリテラシーの向上が期待できるため、プログラミングや電子工作について学ぶきっかけや教材となるモノです。

LEDを光らせたり、ブロックで組み立てた獅子舞、ロボットを動かせたりします。普段はシリコンバレーでEngineerをされている河合さんですが、メーカーフェアでは日本にあるIchigoJamの出店を手伝われているそうです。

プロジェクションマッピング

GMO Internet 社長室プログラマーで、新規開発やセキュリティなどに携わっている新里祐教さん。2012年からSan Mateoのメーカーフェアに日本から参加しており、今回でなんと6回目の出展だそうです!

展示物は暗闇にいる人影を奥行きまで捉え、投影するというモノ。Droneの3次元位置情報を補足してプロジェクションするためのプログラムとしても使えるそうです。

「面白いモノを作る」をコンセプトに、IoT向けのプロトコルを開発し、githubSIPropにてプロダクトを制作・公開しています。メーカーフェアはそれらを発表する場として面白みがあるのではと展示を決めたそうです。

Front Skeleton Robot

鈴木宏明さんは元々半導体ベンダーのCPU / ASIC設計のハードウェアエンジニアだったそうです。メーカーフェアへの出展は今回が初めてで、日本からの出展とのことです。

『前骨格ロボット (Front Skeleton Robot) 』は実物大の紙製骸骨がリアルに歩いたり踊ったりします。棒で操るRod puppetというアナログなテクノロジーが駆使されています。

Dark Room用の展示物ということで暗闇ではカラフルに色を変えながら光り、リアルな骸骨が不気味さを演出します。

映画のVFX(特殊効果)技術が好きで、「スクリーンの中のモンスターや骸骨が現実の世界で動くのを見たかった」というのが作ろうと思った動機だそうです。

会場中を歩かれて、子どもからお年寄りまで皆と「High five!」と言って笑顔でコミュニケーションを取られていました。(怖くて泣き出す子供もいましたが、ご愛嬌ですね)

FabNurce Project

FabNurce Projectをリードする慶應義塾大学 看護医療学部 准教授の宮川祥子博士ら。

3Dプリンターで手軽につくれる看護練習用キットを展示していました。例えば、鼻の穴の奥行きをリアルに再現し吸引練習を可能にしたり、唾液などの受け皿も個々の顔の形に合わせてオーダーメイド品を作ることが出来ます。

今後、高齢化が進む日本では、病院のみならず施設や各家庭においてケアを必要とする人の数が増え、それに伴い、関連するモノの質向上が求められることが予測されます。

看護の現場のニーズに基づいて生産のハードルを下げる、個々のシチュエーションに最適なプロダクトを届けるということを目標に、研究に取り組まれています。ちなみに写真の顔の形は宮川教授自身のものだそうです。

Build Robot Workshop

Build Robot Workshop代表 Paul Quaさん

Paul Quaさんは、子供たち自らがロボットの組み立て、配線、コーディングを経験することが出来るワークショップをメインの活動とし、『Build Robot Workshop』を運営しています。

他のロボット工学のクラスと違うユニークなところは、配線を含めすべて自作で、すでに出来上がったパーツを使わないこと。そして、自分で作ったロボットを持ち帰れることです。

Paulさんは、山口県岩国市に3年間駐在した経験があり、 F / A-18ホーネット(航空機) の航空電子技術者だったそうです。また、日本が大好きで、町の周りで政府職員のためにバスの運転もしていたそうです。

彼の懐中電灯を1からつくるクラスに参加した事がありますが、初心者にも分かりやすいよう丁寧に教えてくれるため、お子さんを持つ方にはかなりオススメです。

HACKER DOJO

HACKER DOJO』のEdさんは、空手を10年程習っていたため日本に親しみがあるそうです。HACKER DOJOは、主にハードウェアを専門とする人達をターゲットにしたSanta Claraにあるコワーキングスペースです。

3D Printer、半田付けキット、レーザーカットマシン等が完備されており、自由に使うことが出来るそうです。ハードウェアスタートアップの交流やイベントも盛んに行われているとのことです。

テレオペレーションロボット

Tatsuru Shirokuさんは、Robotics Engineerで、ロボットスタートアップ『スケルト二クスを立ち上げたあと、スバルにてアイサイトなどの先行運転支援システム開発に従事したそうです。

シリコンバレーでのハードウェア開発を目指し渡米、現在は『UCSC Silicon Valley Extension』にて学生をされています。

HACKER DOJOの展示物の1つであるテレオペレーションロボットのプラットフォームを開発しているとのことで、既成品のHoverBoardに後付けできるコントローラーだそうです。

HACKER DOJOに入っているハードウェアスタートアップのお手伝いとして作成し、上部にディスプレイとカメラを設置することも可能だそうです。

終わりに

メーカーフェアは「発想やモノづくりは楽しく自由だ」という気付きを与えてくれます。独創性あふれる無数の展示、来場者を楽しませようとするMakerの活気、子供からお年寄りまで幅広い年代の人々。もう一種のお祭りです!

ビギナーがハードの仕組みについて学べるワークショップもあれば、ベテランのエンジニアが学生の展示にアドバイスをする場面があったり、普段はなかなか接点がない人たち同士がモノづくりを起点にコミュニケーションしていくのが面白さでもあります。

今回、特に印象的だったのが、好奇心あふれる子供に興味を持つキッカケを与えようとする親の姿です。子供に何かを強要するのではなく、子供たち自身に気づきのキッカケを与える。そういった主体性を持って学ばせようとする親の姿勢を強く感じ取りました。

シリコンバレーと言えばソフトのイメージが強いかもしれませんが、実は、AppleやGoogle、医療機器メーカーや大学の研究施設など、幅広くハードの開発に対応できる場があるのも、隠れた側面なのです。

多くのプロダクトが生まれるこの場所で、そして、失敗が歓迎されるこの場所で開催されるハードのお祭りはとても興味深いものです。まだまだ知らない方も多いと思うので、この記事を通してメーカーフェアを楽しんでもらえるキッカケとなれば嬉しく思います。

寄稿者情報

 Joseph Romani
カリフォルニア州サンリアンドロ生まれ、愛知県岡崎市育ちの米日ハーフ。愛知淑徳大学心理学部卒業。在学中に他大の工学部学生らと自主運営学生寮にて共同生活するなかでモノづくりに関心を持つ。愛知県の金型メーカーに3年間務め、渡米。日本の試作部品加工メーカーのシリコンバレーオフィス立ち上げに従事し、大手テック企業からスタートアップまで幅広くハードウェア開発部署と関わる。日本の町工場とシリコンバレーを繋げる『匠 Project』のメンバー。Canon U.S.A.,Incに勤務。

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