日米の文化の違いと子育て
編集部:仕事以外で文化の違いを感じたことはありましたか?
あかねさん:日本は「一生懸命に一つのことを極める」というカルチャーが強いイメージがあるのですが、こちらでは「マルチに色々とやってもOK」という考えが強いことですかね。
日本でそれをやってるとどれも中途半端な人と思われがちですが、こちらだとマルチに活躍する人が多く、何かをするために他のことを犠牲にしなくてもいいんだと思いました。なので、「子供を産んで子育てが大変だから仕事はできない」ではなくて、どれも欲張っていいんだという感じですね。
編集部:日本だと「枠」みたいなのがあって、そこからはみ出したりすると、あれ?みたいな顔をされたりしますよね。
あかねさん:あと年齢に対するステレオタイプもありませんね。日本だと初対面で年齢をすぐ聞く傾向がありますが、それはこちらではないですね。というか、年齢を聞くのって失礼極まりないですよね。
編集部:過去に日本から来た方がイベントなどで会った初対面の方に「How old are you?」といきなり聞いていて、ちょっと第三者ながらヒヤリとした記憶があります。ちなみに、仕事をしながら子育てもするのってかなり大変じゃないですか?
あかねさん:まだ子供が生まれたばかりなので語れるほど経験はないんですが、ただこの辺のママは3, 4ヶ月で復帰している方も多いです。そもそも日本と違って1年間も育休が取れないんです。カリフォルニアはまだいい方で、給与の55%くらいは3, 4ヶ月くらい出る。でも日本はそれが1年間出るので。
編集部:すごいですね。
あかねさん:日本はそういう育休産休などが手厚いですからね。この辺は全然そんなことないし、あとみんなキャリアを1年間もあけたら戻るポジションがなくなるんじゃないかと思ってすぐ仕事に復帰するんじゃないかなと思います。
編集部:たしかに僕の知り合いの方でも、妊娠して子供が生まれる前後でもリモートであかねさんのように週2, 3くらいで働いていた方はいましたね。
あかねさん:ママのコミュニティでも、ナニーさんとかベビーシッターさんの話はひっきりなしに出てきます。こちらでは基本的にそういうサービスを使うのが当たり前なので、そういう意味では働くママにとってはよい環境だと思います。
編集部:たしかこっちだと子供が小学校を卒業するくらいまでは子供が1人だけで家にいてはいけないといった法律があるんでしたっけ?
あかねさん:だめだめ、捕まっちゃう。だから日本でいう鍵っ子みたいのもNGですね。かといって保育園に預けるとなると月に20万円から30万円くらいは最低でもするので、それなりに稼がないと働いた分のお金ほぼそちらにみたいな感じになっちゃいますよね。
編集部:年間で300-400万円かかるって異常ですよね。ちなみに、こちらでお子さんを産むということに関して不安や心配などはなかったんですか?
あかねさん:私の場合は義理の両親が近くに住んでいて、今も私が働いてる時は義理のお母さんが息子を見てくれているので、そういう意味ではすごく恵まれていますね。
今の所はそこまで不安はありませんが、この辺はすごく教育費も高いし、学区がいいところに住むと家賃も高くて全部お金お金なので、お金の問題はどうなるのかなと思いながら、でも、まだ先のことだからと思って先送りにしているところはあります。
今後のキャリア観
編集部:今後のキャリア観などありますか?
あかねさん:もともとそんなに大きなビジョンがあるわけではなく、行き当たりばったりな部分も多いのですが、仕事をする時はできる限り自分のパフォーマンスを発揮して、会社や取引先にとって価値がある人になりたいと思っています。誰かにポジションを与えてもらうのではなく、自分の居場所は自分で作ろうと思って働いています。
編集部:今後も「プロダクトハンターあかねのネタ帳」やブログ、メディアへの寄稿などを通して、こちらのトレンドを日本に届けていこうという感じですか?
あかねさん:「日本に届けよう」とはあまり思ってないです。実はわたし人前で喋るのが得意ではなくて、ブログを始めたのもブログにまとめると話がまとまって喋りやすくなるからというのが一つの理由なんです。
基本的に自分は怠け者なので、色んなことを習慣化するのが大事だと思っていて、例えばプロダクトハンターあかねのネタ帳というFacebookページも「1日1つ新しいスタートアップを見つけてポストする」というルールを決めていました。そうすると必ずTechCrunchなどのメディアで調べないといけないじゃないですか?
そうやって自分の中でルールを決めて守っていくことで、英語のメディアにも毎日ふれられるし、漠然と記事を読むだけでなくサマリーを作るので人にも説明しやすくなる、そして新サービスにも詳しくなれる、かつデータベースとして後々自分が使える情報も増える。だから、誰かにというよりは未来の自分に向けてという感じですね。
編集部:その未来の自分に向けたものが、結果として他の人の役にも立っているということですね。たしかに、自分もたまにこのメディア内で検索したりします。
あかねさん:便利ですよね。あとやっぱり自分が書いた文章だから、自分が一番読みやすいというか自分に心地良いリズムになってますよね。
編集部:では今後も自分のペースでブログを続けながら、会社や誰かの役に立っていけたらいいなという感じですか?
あかねさん:そうですね。あと、ふと思ったんですが、このエリアにいると常に何かにチャレンジしていないといけない雰囲気があるじゃないですか?今のままではいけないような。どこかに向かって努力してないといけないような。
でも、子供を産んで思ったのは、子供が成長する過程って大人になるための途中経過ではなく、日々色んなことができるようになっていて、毎日毎日が愛おしいわけじゃないですか。
今日はゴールに向かうための途中の1日ではなく、今日しかない1日をもっと大事にしたいと思うようになりました。だから、そんなにプレッシャーを感じて頑張りすぎず、毎日楽しく生きたいなと思っています。
編集部:たしかにこっちにいると、何かやってなきゃというプレッシャーはありますよね。でもそこだけに追われすぎても仕方ないということですね。
メッセージ
編集部:では最後に読者の方にメッセージをいただけますか?
あかねさん:私はとにかくやる気がでない、というか、怠け者なんですよ。でもやる気は待ってても出るものではないので、自分から迎えにいくようにしています。例えば、朝ベッドから起きられないのであれば、「眠い、起きなきゃ」と思うのではなく、まずは足を出す。これ「作業興奮」と言うんですが、体を動かすと脳が「こいつ、やる気だ」と勘違いするんだそうです。
なので、「何かやる」「何かにチャレンジする」みたいことをあまり考えすぎずに、まずは少し一歩踏み出してアクションしてみるところから始めるのが良いかもしれませんね。
編集部:イベントに行ったり、ボランティアに参加したりということですね。
あかねさん:ほんの少しコンフォートゾーンを出るくらいのレベルから始めるとやりやすい。そこからまたコンフォートゾーンが広がってできることも増えてくるので、私自身そういうちょっとした「えいや!」みたいなのが多いかもしれないです。あと、自分が「やってあげている」と思うことはやらないです。
編集部:どういうことですか?
あかねさん:昔、有名な精神科医の先生にインタビューしたことがあるんですが、人はたとえそれが同等だったとしても「自分がやってもらったこと」よりも「自分がやってあげたこと」の方を覚えているらしいんです。
いきなりあれですが、例えばヒモと呼ばれる女の人に物とかお金を貢がせる人っているじゃないですか?あれもなんで女の人が執着するかというと、「やってあげた」という想いが募っていくからなんですよね。だから、ホストとかソシャゲも同じ原理なんです。
編集部:深い話しですね。これだけで1時間くらい話せそう (笑)
あかねさん:だから、人とやりとりしていて、何かをしなきゃいけないというときも、「私はこれをやりたくないけどやってあげるか」みたいな気持ちでやると、後々「してあげた」とうい想いが募るばかりだと思うから、できるだけ「自分がやりたいからやる」と主体的に考えるようしています。
編集部:それは、そう自分に言い聞かせるんですか?それとも、自分が納得する方向に持っていくんですか?
あかねさん:自分が納得していなかったらやらないか、自分が納得する方向に持っていきますね。変に甘んじない、というか受け入れないようにはしているかも。そうすると気持ちよくやれるじゃないですか。
編集部:大事ですよね。やはり色んな人にインタビューをするのは学びがあって良いですね。
あかねさん:私も過去にシリコンバレーワーカーズみたいに色んな人にライフハックを聞きにいくというインタビューの仕事をしていたんです。それこそホリエモンとか、有名な精神科医の先生とか、あとはブラックジャックによろしくの佐藤秀峰さんとか。
なので、本の知識もそうですが、インタビュー活動で得た知識やTipsも多くて、その中には実生活や仕事で使えるものもあります。本や人から聞いた知識って得ただけで満足しがちですが、実際に使ってみるのが大事。世の中にはありとあらゆるTipsが溢れてると思うので、試してみて合わなかったらやめる、自分にマッチしたら取り入れていくのが良いと思います。
編集部:本だと読んで終わりでプラクティスなしというのが結構あったりするので、取り入れていかないとですね。
あかねさん:脳にとって情報は「インプット」と「アウトプット」の2方向あって、どちらも大事ではあるものの、脳はより「アウトプット」を重視するんだそうです。インプットしたものを外に出さないと定着しないらしく、自分でもそれを実感してるので、私は定期的にブログを書いたり、メディアに記事を寄稿したりしています。
編集部:アウトプットというのは、まさに「してあげた」というところに通ずるんですかね。受けたインプットはあんまり残ってないけど、アプトプットの「してあげた」ことは記憶に定着するという。あかねさん、本日はすごく貴重なお話をありがとうございました!
おわりに
本日はScrum VenturesのVP of Marketing / Operationsを務めるあかねさんにインタビューしました。
結婚・出産を経ても、なおキャリアを両立しているあかねさんからは、考えすぎずに一歩踏み出して自分のできることの幅を広げていくことの重要性を教わりました。僕も一つ一つの出会いを大事にして、一歩ずつ何かに挑戦していければと思います!
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