ジョブズの想いは生きている? – Apple本社でソフトウェアエンジニア兼プロダクトマネージャーを務める赤川未來さん

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ジョブズがいなくなった今…

編集部:スティーブ・ジョブズが亡くなってから何か変化ってあるんですか?

みらいくん:僕はスティーブ・ジョブズが社長だった頃には入社してなかったので、聞いた話でしかないんですが、カルチャーとかではなくて細かいオペレーションの部分が変わったらしいです。例えば、スティーブ・ジョブズってベーコンが嫌いで、それだけの理由で会社のカフェテリアからベーコンを消したらしいんです (笑) なので、そういったもともと必要なかった部分が修正されるみたいなことはあったらしいです。

編集部:自分が嫌いだから消すって (笑) 

編集部:ちなみに、社外のメディアだとティム・クックはスティーブにはなれないって言われてたりするじゃないですか。実際、内部の人たちはそのあたりのことをどう思ってるんですか?

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みらいくん:間違いなくなれないですね。でもそれは本人も認めてますし、そもそもなろうともしてないです。でも、そこは二人とも違う存在なので良いんです。スティーブ・ジョブズは天才であり神であって、ティム・クックは尊敬できるリーダーなんです。

編集部:社内でティム・クックに会ったりするんですか?

みらいくん:そうですね。たまに見かけますよ!この前だと、サラダバーに並んでました (笑)

編集部:え!あのティム・クックがサラダバーに並んでたんですか (笑) そういうのは秘書とかにやらせるのかと思ってました (笑)

みらいくん:そういうところで変に奢っていないのが、純粋に人として尊敬できる部分でもあります。

アジアの拠点はずっと東京?

編集部:そういえば、Appleジャパンとの繋がりってあるんですか?

みらいくん:繋がってますよ。僕のチームはクパチーノ以外にはチームを持ってないんですが、サポートチームとかだと24時間稼働していないといけないので、世界的に使いやすいのが時差が8時間ずつズレているアメリカ西海岸、東京、パリかロンドンですね。なので、東京はそう言った意味でも昔から使われてます。

編集部:なんだか嬉しいですね。

みらいくん:Appleってもう創業から40年なのでシリコンバレーの中だとおじいちゃんなんですが、それでも2,30年遡ってみると、アジアといえば日本だったんです。これはスティーブ・ジョブズが親日家だったからというのもあるんですが、その頃っていうのはバブルもありましたし、”Japan As Number One“の時期でもあったので、アジアの拠点を日本に置くっていうのは当たり前だったんです。なので日本法人っていうのは結構歴史が長いですね。

編集部:ちなみに、本社の中に日本人ってどれくらいいるんですか?

みらいくん:この前クパチーノ内で飲み会をやろうってなった時に、メーリングリストには70人くらいいたので、それくらいはいるのかなと思います。クパチーノ全体で社員が2万人くらいいた気がするので、2万分の70ですね。

編集部:思ったより少ないですね…やはりエンジニアだとインドや中国が多いんですか?

みらいくん:一番多いのはアメリカ人で、その中でも白人が多いです。やはり古い会社っていうのは白人が多いんです。というのも、古い会社っていうのは前からいた人材が残ってて、30年前はインドとか他のところから学生がそんなに来てなかったので。それに関しては結構指摘されてるんですけど、でも歴史をたどってみるとある程度仕方ないことなのかなと思います。その人たちをいきなりクビにするわけにもいかないので (笑)

カーネギーメロン大学は超スパルタ

編集部:ちなみにアメリカにはいつから来てるんですか?

みらいくん:2011年ですね。カーネギーメロン大学でEletrical & Computer Engineering (ECE) というコンピュータ工学とHuman Computer Interaction (HCI) という人とコンピュータを科学するような専攻を修了しました。

HCIとは、人とコンピューターの関連を調べることで、人がコンピューターをより効率的に使えるような設計を研究する分野です。グラフィックデザインのほか、コンピューターサイエンス、情報科学、人間工学、認知エンジニアリング、心理学、社会学といった分野との相互関連も見られます。-MITSUE LINKS

編集部:すごい!ダブルメジャーなんですね!ちなみに、そのECEを専攻したのには何か理由があるんですか?

みらいくん:1つあるとすれば、母の友達にNASAのソフトウェアエンジニアがいたんですが、彼に少しだけプログラミングを教えてもらったことですかね。入門中の入門ではあったんですが、その時彼に「お前はこれをやった方が良い」みたいなことを言われて、そこから少しずつ興味を持ち始めました。その時は中学生だったので少し忘れてたんですけど、高校3年の時にふとそれを思い出して、よしそれをやろうとECEを選びました。

編集部:大学からアメリカっていうのは、ECEの分野ではアメリカの方が進んでいるからですか?

みらいくん:特に国にこだわりがあったわけではないんですが、自分がやりたかったことに一番フィットしていたというのが大きいですね。でも大学ランキングをみてると、アメリカの大学は上位が多いですよね。特にコンピュータサイエンス系だとトップはほぼ決まっていて、MIT、カーネギーメロン、バークレー、スタンフォードとかなんです。もうずっと動いてないです。

世界大学ランキング:コンピューター科学部門1位〜25位

編集部:殿堂入りですね (笑)

みらいくん:あと、僕は生い立ち的に少しイタリアに住んでいたことがあって、イタリアのインターナショナルスクールに通ってたんですが、その頃から母親が日本の教育システムを結構嫌っていて、日本の大学はNGだったんです (笑)

編集部:え、その時点で日本の大学は無くなってたんですか (笑) ちなみに、コンピュータサイエンス系だとシリコンバレーがある西海岸も魅力があったんじゃないかと思うんですけど、なぜ東海岸のカーネギーを選んだんですか?

みらいくん:実は、第一志望はスタンフォードだったんですが、そこに受からなかったのでカーネギーにしたんです。でも結果的にはそこで良かったなと思ってます。というのも、僕は元々やらなくてもいいならやらないみたいな性格なので、スタンフォードみたいに自由で環境も整ってるところに行ってたら、おそらくやらなくてもいいやって感じでだらけてたと思うので。それと比べるとカーネギーがあるピッツバーグはめちゃくちゃ寒いし、大学もスパルタだし…そういう意味で、僕にとってカーネギーは負荷もあり成長できる環境でした。

編集部:スパルタというと課題とかも結構あったんですか?

みらいくん:まあ、半端じゃないですね (笑) 例えば、日曜日の日中から課題をスタートして朝4時までやっても終わらないくらいです。月曜も火曜も水曜も朝の4時とか5時までやるんですが、まあ木曜あたりになると体がもたなくてダウンしちゃうんです (笑) 本当に毎週こんな感じでしたね。もちろん金曜日は飲みに行くんですが、まさに”Work hard, play hard.”って感じです。

編集部:田舎だし、天気悪いし、課題終わらないしで、なんか色々やばいですね (笑) 体調崩したり辞めたりする人はいなかったんですか?

みらいくん:結構いましたよ。中退率もめちゃくちゃ高くて、僕の学科だとスタート時点では300人いたんですが、卒業したのは100人とかでした (笑) ほぼフェードアウトです。

編集部:もはや軍隊ですね (笑) そういう環境を卒業してると、今って暇だなってならないんですか?

みらいくん:ありますね。ただAppleの場合は、会社側からの期待値とか要求水準が高く、みんなもそのプロジェクトを成功させたいっていう願望が強いので、結果的に残業したりってことはあります。あと、基本的には最後までしっかりとやりきる文化なんですが、金曜は早く帰ったりとメリハリのある働き方をしている人は多いです。

編集部:ちなみに、今ってビザどうしてるんですか?

みらいくん:今は正確にいうとF1ビザ(学生ビザ)を使っていて、そのOPTで働いてます。卒業した学科がSTEMなので3年間OPTが有効なんですが、毎年H1-Bビザ (就労ビザ) を受けてます。今のところ抽選で当たってないので、運がきてないですね (笑) 来年がラストチャンスなので、来年どうにかしないと。。。どうなるんですかね (笑)

STEM教育 (ステムきょういく) とは、”Science, Technology, Engineering and Mathematics” を総称する語である。Wikipedia
OPT (Optional Practical Training) とは、学生ビザ (F-1) で就学している学生が専攻した分野と関連のある職種で、プログラム修了後に企業での実地研修を行うもの。留学サイト.com

編集部:あれって会社がサポートしたらビザが出るってものでもないんですか?

みらいくん:そうじゃないんですよ。H1-Bビザっていうのは会社のフルサポートでも抽選になってるんです。あと、どの会社にいるかも関係ないんです。なので、例えば、Apple社員だろうが田舎の工場の人だろうが同じ土台で抽選にかけられるんです。

編集部:ある意味平等といえば平等ですね (笑)

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