本日のゲストは、サンフランシスコを拠点にするデザインコンサルティング会社btrax,Incにて日系企業のイノベーション創出のサポートをされている波江優さん (ゆうちゃん) です。
将来的には国際問題の解決を行いたいというゆうちゃんが、なぜサンフランシスコのデザイン会社で働くことになったのか、女性視点から見た日米間でのキャリア観にはどんな違いがあるのか等、注目トピックが満載です!
肩書はイノベーションファシリテーター
編集部:早速ですが、今働いているbtraxはどんな会社なんですか?
ゆうちゃん:btraxはデザインを軸としたコンサルティングを主に行っていて、アメリカから日本に進出したい会社をお手伝いしたり、逆に日系企業をグローバルにアクセラレートするためのサポートをしています。
編集部:ゆうちゃんはどんなプロジェクトを担当してるんですか?
ゆうちゃん:私は、主に日系企業に対するイノベーションを支援するプロジェクトに関わってます。日系企業で新しいことをやりたくても、実際のところどうしたらいいのかわからないという会社って意外と多いんです。そういった会社にサンフランシスコ・シリコンバレーのビジネスにおけるマインドセットや文化をお伝えした上で、日系企業にとって受け入れやすい形でそれらを取り入れていくお手伝いをしています。サンフランシスコはスタートアップが多くて、例えばUberやAirbnbのサービスアイデアはこれまで存在すらしなかったのに、今ではみんなが当たり前に使うプロダクトを創造し、人々の生活を変えました。彼らはまさにイノベーションを起こしたといえますよね。
編集部:たしかにこのエリアはイノベーションの中心となってますね。日系企業からはどのレイヤーの人が来るんですか?
ゆうちゃん:それはクライアントさんによって色んなパターンがありますね。20代の若手というケースもあれば、社長を含むトップ3人でいらっしゃるパターンもありました。
編集部:トップ3人が来るって良い意味で気合の入り方が半端ないですね! プロジェクトの中でゆうちゃんは具体的にはどんな役割をしてるんですか?
ゆうちゃん:私はデザイン思考やUXに関連するワークショップのファシリテーターという立ち位置で関わっています。最近はクライアントさんとのプロジェクトの進行管理も任せてもらえるようになりました。ちなみに、名刺の肩書は「イノベーションファシリテーター」です(笑)
編集部:その肩書めっちゃかっこいいですね(笑)
ゆうちゃん:あくまで答えを与えるのではなく、クライアントさんに新たな視点から物事を考えてもらう、きっかけを与えてファシリテーションしていくことをやってます。プログラムの形はその時によって異なりますが、前回私が担当したものは、クライアントさんに10週間でスタートアップをやってもらうというものでした。
編集部:スタートアップをやってもらうというのは面白そうですね! 実際にはどんなことをしたんですか?
ゆうちゃん:まず始めに日本とシリコンバレーにおけるビジネス上のカルチャーの違いのような基本的なことと、デザイン思考やスタートアップのエコシステムの概要などをレクチャーして、その次に「じゃあ街に出てイベントに行ってみましょう!」みたいな感じで外に連れていきました。
編集部:あ、もういきなり外に連れて行くんですね(笑)
ゆうちゃん:スタートアップは行動力が大事らしいので(笑) サービスのコンセプトも全部ゼロから考えてもらうことにしていて、例えば参加されていた4人でどんなことをやりたいか、それはなぜかなどを全部ばぁーと出してもらい、どれだったら4人全員がパッションを持ってできるのかを真剣に議論してもらいました。
編集部:じゃあ所属会社の新しいプロダクトとして何をやるかではなくて、本当のスタートアップのように、「この4人で何をやるのか?」を考える感じなんですね。ちなみに、参加者はどんなリアクションをするんですか? 普段は会社から言われた仕事をやるのに慣れているわけで、それがいきなり「あなたが情熱を持てるものを探してスタートアップを始めてください」と言われると、考え方や進め方とかに困惑しないんですか?
ゆうちゃん:前回の場合は、最初は参加者もそこまでのプログラムではなくて、正直ただの研修のつもりで来ていらっしゃったようで、結構困惑されていました。あとは、問題提議を徹底的に行うプロセスや、はじめから完璧なものを作るのではなく何回も失敗してやり直しを重ねる方が良いという考え方を受け入れることに対して戸惑う方もいます。でも、やはり日本の企業で働いている人は、やるからにはやろうというマインドセットが強いので、一度スイッチが入った後はすごく没頭して取り組まれていましたね。
編集部:その姿はたしかにイメージできますね。最終的なアウトプットはどこかで発表したりするんですか?
ゆうちゃん:前回は、サンフランシスコ市内ではちょっと老舗のピッチイベントに出てもらいました。そこは審査員として5人くらい投資家がいて、その人達からの投資を求めるイベントなんですけど、前回は正直に自分たちが日本の企業から派遣されてきていることと、投資ではなくフィードバックをもらうことが目的であることを伝えて参加させてもらっていました。ピッチ後には、サービスのディティールやコンセプトの曖昧な部分などに鋭い質問をガンガンされて、みなさん結構ヘコんだと言っていましたね。
編集部:なるほど。でもそういうフィードバックも含めて今までと全然違う経験ができて、価値観が広がるいいきっかけになりそうですね!
ゆうちゃん:そうですね、そういった色々な経験を通じてインスピレーションが生まれるわけですし、私自身も日系企業の方々がもっとワクワクできるようになるお手伝いができているのは面白いし、やりがいがあるなと思いますね!
btraxとの出会いは偶然だった?
編集部:今はbtraxに入社してどのくらいなんですか?
ゆうちゃん:10ヶ月くらいですね。最初は3ヶ月ほどインターンをして、その後にパートタイム、フルタイム、と徐々にシフトしていきました。
編集部:インターンで入ったのはどういう経緯だったんですか?
ゆうちゃん:元々は大学の専攻が国際関係だったこともあって、国際機関やNGOに興味があったんですね。でも実際に調べてみると、そういう組織は意外とストラクチャー化されていて新しいことがやりにくい可能性があると感じたんですよ。一方で、大きい企業でCSRとかの面から解決する方法もあるんじゃないかと考え始めて、じゃあ一回企業に就職してみようかなって思って。ちょうどその時に、知り合いの女性とランチの約束をしていたんですが、その際に連れてきたお友達がbtraxで働いている方でした。私はそれまでbtraxを知らなかったのですが、彼女の仕事の話を聞いてめっちゃ面白そうだと思ったんですよ。
編集部:すごい偶然の出会いですね(笑)
ゆうちゃん:その時にデザイン思考のことを初めて聞いて、デザイン思考が問題解決の方法だというのを知りました。あと、デザイン思考に興味があるならIDEO.orgっていうところなら国際問題に関連したこともやってるよーとその時に教えてもらって、その後調べてみたら、デザイン思考を活用して発展途上国の問題解決に貢献している事例があるとわかりました。それで「私めっちゃこれやりたいじゃん!」と思って(笑)
ゆうちゃん:その後も自分で色々調べていくうちに、これを学んだらNGOなどのノンプロフィットの領域で、他の大きな枠組みでの国際問題や社会問題にも応用できるかもしれないってさらに興味を持ちはじめたんです。その少し後に、そのことを教えてくれて方がbtraxを辞めて日本に帰るという話を聞いて、その前に会って話を聞きに行かなきゃってことで、彼女が日本に帰国する3日前くらいに捕まえて、一緒にご飯に行かせてもらいました。
編集部:え、そんな急遽(笑)? すごい行動力ですね(笑)
ゆうちゃん:それでデザイン思考の話やどんな仕事をしてるかとかを改めて聞いて、その方がやってる仕事の内容が純粋に面白そうだなと思ったんですよ。それでbtraxにはインターンの制度があるから、もしかしたらできるかもしれないよと教えていただいて、早速応募して、その後面接を経てインターンが決まり、入社が決まったという流れです。
編集部:いい意味で偶然というかタイミングが合ったわけですね。
ゆうちゃん:色々と悩んだ部分もありましたけどね。せっかくアメリカに来たからにはもっとアメリカンな現地企業で働きたいとかも考えてましたけど、絶対働きたいみたいな求人は見つからなかったので、今目の前にある出会いとワクワクに従ってみようと思ったんです。
1990年6月8日生まれ。埼玉県川口市出身。
2013年、一橋大学商学部経営学科卒業。株式会社SpeeeにてSEOやWebマーケティングのコンサルティング等に3年半従事したのち、イノベーションの最先端であるシリコンバレーでチャレンジしたいと考えて渡米。現在は、UC Berkeley Extensionにて経営とプロジェクトマネジメントを専攻。
座右の銘は「やらぬ後悔よりやった後悔」。