予備知識なしでd.schoolのデザイン思考ワークショップに行ってきた

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この記事の所要時間: 38
*この記事は姜泰光さんからの寄稿です。

7月18日にスタンフォード大学 d.school にて行われた『Introductory Design Thinking Workshop』に参加してきました。今回は本ワークショップで行ったこと、そこから得られた学び・思ったことなどをまとめていこうと思います。

▼本記事の内容
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1. デザイン思考のコンセプトに混乱
2. ワーク内容
3. デザイン思考の奥深さ、感想
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d.schoolの雰囲気はこんな感じ

1. デザイン思考のコンセプトに混乱

1-a:背景知識

d.school はスタンフォード大学内に設置されている施設です。ここでは我々がシリコンバレーと聞いて連想するようなユニークかつ、クリエイティブなアイデアが日夜生み出されています。d.school とは一体何をする施設なのでしょうか。

ホームページには目的としてすべての人々に備わるクリエイティブな感性を呼び起こす方法の模索、それらの実世界への応用(筆者意訳)といった記載が見られます。

d.schoolのHP

我々の感覚からすれば、クリエイティブなアイデアというものは才能を持った一部の人材が作り上げるものであると感じるのではないでしょうか。少なくとも、例えばオーソンウェルズ(『市民ケーン』の監督)が人類史に残した映画的発明が誰にでも思いつくものであると考える人は多くは無いはずです。

しかし、d.school はそのバイアスに挑戦します。誰もがクリエイティブな思考法を養うことができると信じ、そのメソッドとして『デザイン思考』 を提唱しました。デザイン思考とは何なのかを簡単に説明すると「人間目線で問題を解決するアプローチ」です。コンサルタント業などでよく耳にするロジカルシンキングはこれに対して「定量的・フレームワーク的思考法」である点で異なるアプローチであると言えるでしょう。

ここまでの事はデザイン思考という言葉を聞いたことがある方ならほとんどがご存じだと思います。私の場合はデザイン思考という言葉自体を2週間前に知り、当然これらの背景知識を何も知らないままワークショップに参加しました。それもあってかワークショップの冒頭から驚きと混乱の渦に巻き込まれることとなりました。

1-b: ウォームアップ

予定時間丁度に d.school に到着し、中に入るとそこにはホームページで見覚えのある光景が広がっていました。コンクリート打ちっぱなしの壁に開放感のある高い天井――現代美術館のような内装にクリエイティブな雰囲気を感じます。

そんな中、d.school の学生とおぼしき司会の方が、近くにいる人と4~5 人のグループを作るように指示しました。ウォームアップを始めるようです。各グループに1つずつ小物が与えられました――おもちゃの腕輪、洗濯バサミ、クリップ――それぞれのグループに違うものが与えられます。そして各メンバーで円をつくり、その小物が『何に使えるものなのか』を順番にテンポ良く言っていくというワークが始まりました。

小物の一例:何に使うんでしょう(笑)

このワークは固定観念に縛られず多様な視点で一つの事物を考察するということを目的としているようです。しかし、例えば腕輪がネックレス、髪留めなどと色々な用途に使えることが分かると言語の定義というものが曖昧になっていく気分に襲われました。例えば我々がクリップをクリップと呼んでいる限りその用途は限定的な意味合いをどうしても持ってしまいます。このように普段は常識だと思っているような認識さえも揺らいでいくのです。

クリエイティブな人はよく常識にとらわれないと言った評価がなされているように感じますが、彼らは事物の認識をどのように行っているのでしょうか、気になるところです。

固定観念を取り除くことを求められます。

2. ワーク内容

ウォームアップが終わると違う部屋に移動します。そこで新たにグループが組まれ、メインとなるワークが始まりました。その内容は「レストランで順番を待っている人を楽しませる施策を考案する」というものです。

考案までのプロセスは以下の通りです。(抽象的ですが後ほど詳述します。)

  1. (自分が客だとして)何をすれば楽しく待てるかというアイデアをブレインストーミング→途中で制約をつけて再度ブレインストーミング
  2. アイデアを統合し施策案を考案
  3. 設定を詳細に定めて施策案をテスト
  4. フィードバックに基づいて改善案を考案、以下3, 4の繰り返し

基本的にワーク中は自由でしたが、一つだけルールがありました。それは「他人のアイデアを否定しないこと」です。全て「Yes, and…」とリアクションすることを求められました。

また1の過程では基本的に他人のアイデアを深めることもせず、単純にアイデアを出しあうだけで、ある程度アイデアを出した後に新たに制約を設けてストーミングが再開されました。私のグループでは「実現に100 万ドル以上 (1億円以上) かかるアイデア」「ファンタジー要素を含むアイデア」などの制約が設けられ、これらの制約は言う事を躊躇っていた突飛なアイデアを促し、ワークを活性化させる役目を果たしていました。

その後①で集まったアイデアの中からメンバー全体で良いアイデアを選び、それらを繋いでいきます(②)。私の意見ですが、この段階が一番難しいように感じます。ベクトルの異なる様々なアイデアを、問いに対する答えとして適切な形にパッケージングしていかなければいけません。実際のワークでもここはスクールのスタッフの方が主導していました。

その後は作った施策案を実際にテストしてみます(③)。役割を決めて実際に本気で演じ、そしてその結果、改善すべきだと思う所を共有し改善するというサイクルを短期間で複数回行います。(④)この点はとても重要です。

今までは比較的、現実面などを考慮していませんでしたが、この段階で現実面などを議論していきます。資金・人的リソースなど、それぞれの観点から改善点を炙り出し、最終的には実現可能でユニークな解決策が完成するというプロセスでした。

ワーク後は個々人が感じたことを発表し、最後に司会の方がデザイン思考に関する参考文献などを紹介してワークは終了しました!

紹介されていた参考文献たち

3. デザイン思考の奥深さ

以上、ワークの概要を簡単に説明しましたがワーク内で感じたデザイン思考の重要な点・必要な能力を再度振り返ります。

  1. 常識にとらわれず、物事の本質をとらえること
  2. 意見を出すことを躊躇わず、人の意見を批判しないこと
  3. 複数の意見を自由に組み合わせるアイデア力
  4. 「テスト→改善」のサイクルを高速かつ何度も繰り返すこと
  5. チームで考えるというスタンスを保つこと

これらが守られない場合、先ほどのようなワークはただの連想ゲームと化してしまう危険性があります。他人の意見を受け入れつつ自分のアイデアを表現し、アイデアの海の中の漂流を楽しむマインドセットが必要であると感じました。

さて、今回初めてデザイン思考のワークショップに参加しましたが、個人的には小学生の時に友達と新しい鬼ごっこを発明したことを思い出しました。皆でアイデアを出し合い、実際に試し感想を述べて改善する――プロセスは今回のワークととても似ていますね!

クリエイティブな思考法の本質は案外、子供のころ無邪気に楽しみながら考えたあの経験の中にあるのではないかと思いつつパロアルトを後にしたのでした。

寄稿者プロフィール

 姜泰光
(かん・やすみつ)
石川県出身の在日韓国人で、韓国にいたことがあるのは3時間のみ。現役の大学生で、東京大学で国際関係論を学んでいたが、休学し現在はサンフランシスコ州立大学で国際経営を学ぶ。日本では医療系マーケティング会社でデータ分析のアシスタント経験を積み、現在は課外活動として日米間相互理解を目的とするNPOで活動中。来年1月より韓国でインターンをする予定なので、現在受け入れ先を探しています!

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