【時代はAIロボットアーム!?】Osaroでロボットエンジニアをされている河本和宏さん (前編)

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投資家は伝説の起業家!?

編集部:Osaroは創業が2015年とのことですが、15年末には330万ドルも調達してるんですね!

産業用ロボットの頭脳を開発するOsaroがPeter Thiel氏などから330万ドル調達 –The Bridge

河本さん:結構期待はされているのかなと思います。投資家はYahoo創業者のジェリー・ヤン、PayPal創業者で伝説の起業家とも言われるピーター・ティール、あとは物言う株主として有名になったサードポイント創業者のダニエル・ローブとかです。

伝説の起業家とも言われるピーター・ティール

編集部:かなり豪華ですね(笑) やはりOsaroが持つ技術力と狙っているマーケットの大きさが注目されているんですか?

河本さん:そうですね。あとは「AI×ロボティクス」の領域に他の会社より前から取り組んでいるというのもあるのかなと思います。ただ、最近はアメリカだけでなく中国からも物凄い勢いで競合が出てきているので、我々も本当に急いで開発を進めないとという感じですね。

編集部:たしかに中国ヤバそうですね(笑) ただ、そこは2015年からやっているという1-2年のアドバンテージがだいぶ活きているわけですね。

河本さん:やはり創業者たちがちゃんとした経歴の持ち主で、今はもう抜けたんですが、1人は大学でマシンラーニングを研究していた教授で、もう1人が現在CEOでFounders Fundというピーター・ティールのVCでプリンシパルをしていたような方なので、それも大きいと思います。当時、Google DeepMindへの投資を担当していたのが現在のCEOなんです。

編集部:すごい(笑) じゃあ、がっつりAIというかマシンラーニングのバックグラウンドがある方たちなんですね。

河本さん:VCって日本だと文系の方も多いですが、CEOの場合、彼自身もともとMITでコンピュータサイエンスと物理を専攻していた背景もあって、技術への理解もすごく深いですし、社内である論文の輪読会にも普通に参加してくるんですよね。

編集部:まさにシリコンバレーのVCというか、テクノロジーとビジネス両方を知ってる感じなんですね。

河本さん:あとCTOがイスラエルから来たシニアな技術者なんですが、本当に何でも知っていて、過去に画像認識用チップの会社をサムスンに売却したことがあるような、シリアルアントレプレナーでもあるんですよね。

編集部:メンバーがすごい(笑)

河本さん:それもあって、初期に強化学習とかディープラーニング関係のPh.Dをたくさんチームに巻き込めていたからそれくらい投資が集まったのかなと思いますね。会社の規模も自分が入ってからちょうど2倍になりました。

編集部:じゃあ会社の成長を間近で見れたわけですね。やはりエンジニアが多いんですか?

河本さん:そうですね。ビジネスサイドの人はほとんどいないです。みんな名の知れた大学でPh.D、少なくともマスターを取ったような人達なので、仕事をする上ではすごく面白いですよ。

本当は建築家になりたかった…

編集部:河本さんは大学時代もメカの勉強をしていたということですが、そこはどういう経緯でメカを選んだんですか?

河本さん:元々何かを作るのがすごく好きで、なぜか幼稚園の頃にクリスマスプレゼントで日曜大工セットみたいなものをもらってましたね。そこでコンピュータをもらってたらもうちょっと真面目にプログラミングとかをやってたと思うんですけど、その時もらったのが金槌と釘とかだったので(笑)

編集部:その時からハードウェア寄りだったわけですね(笑) じゃあ、そういう背景でモノづくりというかハードウェアのメカを専攻したと。

河本さん:でも本当は建築家になりたかったんです。私は関西出身で、阪神淡路大震災の時に自分の家の周りの建物がめっちゃ壊れたんですよ。その時、大工さんの手伝いをした経験もあって、ずっと建築家に憧れてたんです。でも中学生の時に行った建築事務所での社会体験みたいなのがホントに面白くなくて…(笑)

編集部:まさかの(笑)

河本さん:ひたすら図面のコピーしたり、池の面積を測ったりって感じで…そこで将来についてホントに迷いましたね。でもやっぱり何かを作ることには携わっていたいなという想いがあったので、建築家ではなくてメカを選んだんです。

編集部:なるほど(笑)  実際に大学でメカの勉強をしてみてどうでしたか?

河本さん:授業自体はあまり面白くなかったんですが、設計の実習では車のエンジンを作ったり、新しい機能が付いた自転車とかを設計できたので面白かったですね!

編集部:それはどんな機能だったんですか?

河本さん:自分達のチームはジャンプができる自転車を設計しました。京大の正門前ってめっちゃ段差が高くて、みんな勢いをつけてガンって乗り越えるんですけど、下手な人だとたまにコケるんですよ。なので、これは問題だと思って、ボタンを押したらバネがビヨーンってなってジャンプするような自転車を設計しましたね(笑)

編集部:結構面白いですね(笑)  それは設計しただけですか?

河本さん:設計だけで実際に作ってはいないです。でもそういう経験を通して、単純にハードを作り込むだけじゃなくて、機械が人の感情や行動を検知しながら何か動作するとか、もっと人のことを考えないとダメだなと思い始めたんです。それで、ハードとソフトの融合みたいところを探求できないかと思い、4年生の時にそういった研究をしている研究室に入りました。

編集部:Human-Robot Interactionのような感じですか?

Human-Robot Interaction (HRI) とは、人が使ったり、人と共存して活動するようなロボットシステムをデザインする研究領域

河本さん:そうですね。やっぱり研究自体はすごく楽しくて、人の動作から感情を読み取る研究だったり、大学院の時は日産自動車との共同研究で、人間にとって分かりやすい自動運転のあり方とか、運転支援の仕方について研究してました。2011年頃はまだGoogleが自動運転を外部に公開し始めたようなタイミングだったので、業界としても半自動運転が主流、ようやく完全自動運転に議論が移行していこうとするような感じでした。

自動運転技術を研究開発するGoogle発のWaymo

編集部:たしかに、一時期そういうニュースが話題になりましたよね。

河本さん:自動化の過程で問題になるのが自動運転モードとそうじゃない時の切り替えなんです。実はこの切り替えの部分が事故に繋がりやすくて、航空機の分野だと既に問題になっているんですが、人が機械のモードを誤って認識してしまうと機械が入力を受け付けないことがあって、ひどい場合は墜落のような重大な事故に繋がってしまうんです。

編集部:たしかに飛行機で聞いたことがあるのが、機械側は着地しようとしてるのに人は持ち上げようとして、機械が分からなくなってエンジンを停止したという話を聞いたことがあります。

河本さん:ロボットの世界でも自動運転の世界でも、今後はそういう議論がもっと出てくると思いますね。実際に今まで工場とかで使われていたロボットが、より人と直接インタラクションするようになってくると、そのロボットが何を考えているかをきちんと人に伝えていくことが大事になってくるので。

編集部:間違いないですね。

河本さん:実際にホテルロボットの場合、今何をしているのかを顔のディスプレイに表示したり、エレベーターに乗った時にわざわざ振り返るように設計されているんです。ロボットなので振り向く必要ないじゃないですか。前から入って、後ろ向きに出れば良いので。でも、ちゃんと人間らしくしているんです。

編集部:言われてみるとそうですね。

河本さん:自動運転でもdrive.aiっていう会社がスタンフォードの近くにあるんですけど、あそこは社長がHuman-Robot Interactionの専門家で、自動運転の際の歩行者とのインタラクションであったり、意思表示の仕方とかを研究・開発してますね

自動運転用のAIソフトウェアを開発するシリコンバレー発のスタートアップ「drive.ai

編集部:たしかに横断歩道で車が近づいてきた時に、人間同士だったらアイコンタクトや仕草で渡って良いのか分かるけど、自動運転の車だとそれが分からないし、事故った時は誰の責任なんだみたいなこともあるので、今以上に人とロボットのコミュニケーションは重要になりそうですね。

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