Onigilly、誕生
編集部:もともとはITの会社で働いていたということですが、そこからOnigillyを立ち上げるまでの経緯を教えていただけませんか?
金松さん:元々はモバイルでシリコンバレーを制覇しようと思ってたんです。当時、サンフランシスコでiPhoneの初代機に触れて、これは来るなって思ったので。それでモバイル用の占いサイトを作ったりしてたんですが、なんかよく分からなくて、、、自分が何をやりたいのか。
編集部:どういうことですか?
金松さん:おそらく起業することが目的になってて、中身は何でも良かったんですよね。だから、自分の本当にやりたいことがよく分からなかったんです。
編集部:手段の目的化が起きていたと。
金松さん:それで、たまたまニューヨークに出張した時に「OMSB」っていうおむすび屋さんを見つけて、「ニューヨークすげー、おにぎりがある」って感動して。
編集部:僕もたった今、「おむすびー」とかやったら流行るかなって心の中で思ってました(笑)
金松さん:それで、アメリカで出会った親友に長谷川幹くんっていう人がいて、彼とはいつも夢を語り合ったり、勉強会をするような仲なんですが、そんな彼がある日「カフェをやりたい」って言い出したんです。だから、「カフェはそこら中にあるから、おにぎり屋はどう?」って。
それで、「じゃあ分かった!」って言って、初めは彼がメインでやってたんです。僕もFounderではあるんですが、他の仕事があったので初めはサポートみたいな感じでやってて、でもやってるうちにだんだん自分も熱くなってきて。
編集部:熱が入って来たわけですね。
金松さん:当時、幹くんがバイト先のカフェのオーナーにお願いして、レジ横でおにぎりを売らせてもらってたんですが、普通に白人の女性がそれを買って、コーヒーを飲みながら、しかも歩きながら食べてるのを見てこれは熱いなって。それでビビっと来たんです。
編集部:これは来るみたいな。
金松さん:あと、幹くんの友達のシェフが給食ビジネスをやりたいということで、現地の学校に給食を見に行ったことがあるんです。そしたら、日本人の子供たちはお母さんが作ったお弁当とかを食べてたんですが、他の子供たちはピザとかポテトとか、良くてバナナしか食べてなくてかなりショックを受けたんです。
編集部:良くてバナナって…
金松さん:その時、今まで自分がスタートアップで学んだビジネスのこととか、セブンイレブン系の人たちに教わったサプライチェーンの知識とかをフル活用して、これならおにぎりでもいけるんじゃないかっていうイメージが出来たんですよね。
それで、誰に見せるわけでもないけど、自分用のカッコいい企画書を作って、それをみんなに見せて「これ熱いねー」みたいな感じで自分を盛り上げて。
編集部:それで本格的にOnigillyを展開して行ったと。
女性しか入れないプログラムに採択?
編集部:なんでも女性しか入れないインキュベーションプログラムに採択されたとか?
金松さん:そうですね。「ラ・コシーナ」っていう移民女性を対象にフードビジネスの起業支援をするNPOがあって、ものすごく倍率が高くて、そもそも男性は受け付けてなかったんですが、企画書を見せて、おにぎりを持って行って、500店舗いくからって言って。
編集部:その時から500店舗って言ってたんですね(笑)
「ラ・コシーナ」は移民女性向けのフードビジネス支援組織
金松さん:それで、僕はあまり英語が喋れなかったから、プレゼンでは幹くんに喋ってもらって、僕も一言くらい「アメリカのファーストフードは不健康なものが多いから、本当になんとかしないといけない。だから、ここで僕らを選ばないとアメリカが困る。」って。
編集部:え?アメリカが困るって言ったんですか?(笑)
金松さん:だから、僕らに力を貸してくれって感じで。それでアジア人で初めて、かつ男性で初めてそのプログラムに採択されたんです。
編集部:エピソードが濃すぎる!じゃあ、そのプログラムを卒業した後、実際に外で売り出してっていう感じですか?
金松さん:そうですね。でも当時、80年代のボロボロのピックアップトラックを使ってたので、イベントの時とかにお茶のボトルをいっぱい積んでると、重すぎて止まれないんですよ。なので、何回も赤信号の交差点に突っ込んでました。
編集部:危なすぎる…
金松さん:あと、カートで売ってたらいきなりドラッグ中毒の人に絡まれたりとか。もうむちゃくちゃなんですよ。怖いし、邪魔されるし、寒いしで。しかも、1日ずっとやって儲けた80ドルが盗られたりとか。1個しか売れないなんてこともありましたね。
編集部:それは辛い…
金松さん:本当にもう。
編集部:場所はテンダーロインですか?
テンダーロインは市内でも有名な治安の悪い地区
金松さん:テンダーロインみたいな治安の悪いところだったり、フェリービルディングのテントがいっぱいある後ろで見えないところだったり。食べてもらえたら嬉しいんですけど、もうYelpにボロクソ書かれて。「あそこの寿司は寿司じゃない」とか、日本帰りのアメリカ人に「日本のセブンイレブンのおにぎりの方がうまい」とか。
編集部:そもそも寿司じゃないっていう。
金松さん:でも、そういうのは想定してたんです。たぶん、受け入れられるまでしばらく時間がかかるだろうなって。だから、初めの頃は余ったお米を食べたりして、すごく質素な生活をしてましたね。あと、奥さんがフルタイムで働いていて、安定した収入があったからなんとか食っていけたっていう感じです。
編集部:苦しい時期があったわけですね。