ドイツ企業SAPに学ぶ #後天的なイノベーションの起こし方

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SAP変革の鍵:3つのP

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坪田さん:ここでSAPが出てくるんです。SAPは、さっき言った通り40年間ずっと9割既存事業でやってきて、そこから一気に伸びたわけです。これは、我々にとっては破壊的イノベーションを自分たちで内製化したということなんです。

それにはSAPならではのコツが3つあって、1つ目が「People」。これはイノベーションの一丁目一番地と言われる、人の多様性ですね。多様な意見がぶつかるところで、イノベーションは生まれやすいと。

我々は一番初めにPeopleに手をつけました。先ほどシリコンバレーがイノベーションの拠点みたいなことを言いましたけど、4000人働いていて、その従業員の国籍が40カ国なんです。1番多いのがインド人。2番目が中国人。ドイツ企業のアメリカ法人ですが、アメリカ人やドイツ人は1割もいないんです。日本人は3人で、うち2人は日系アメリカ人です(笑)

多様性溢れる経営陣

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坪田さん:これは、我々の今の取締役会なんですけど、例えば、女性リーダーの登用もありますし、36歳のCOOもいるんです。ドイツの上場企業では、一番若い取締役です。我々のCIOは32歳で、私の2つ上です。

彼らはもちろん優秀で、それは疑いようがないんですけど、もともとSAPはこんな体系になる企業ではなかったんです。

昔はみんなドイツ人のスーツのおじさんという会社だったから、この5-6年の間にすごく変わったわけです。これってやっぱり仕組みなんです。要はいかに変化を内製化して、仕組みを作っていくかということなんです。

例えば、若者を雇用する仕組み。我々はVocational Trainingという職業トレーニングを高校生や大学生に行なっていて、SAPが大学の授業料を全部払ってあげるんです。

そして、大学生活の3年間をかけて、3ヶ月間学校で勉強したら、その次の3ヶ月間はSAPでインターンしてというサイクルをずっと繰り返すんです。だから、大学生活の半分はSAPでインターンするんですね。

しかも、このインターンの期間は、自分で仕事も選べるんです。どこに行ってもOKで、グローバルの仕事をしてもOK。もちろん、自分でマネージャーと交渉しなきゃいけないんですが、ドイツでは年間100人がこれをやっています。

面白いのは行政との繋がりで、ドイツの教育省がちゃんとSAPでのインターンを単位として認めてあげるくらい密度の濃いトレーニングをしているんです。そして、最近は中国とアメリカでもこれを始めました。年間200名の幹部候補生を高校生から選んでいるわけです。

だからさっき3年間って言いましたけど、卒業してSAPに入った時には4年目と同じくらいの活躍ができるわけです。そういう仕組みなんですね。

Place:新規事業と既存事業

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坪田さん:次にPlace。これがちょっと面白いですね。Placeというのは城下町から離れる、つまり城下町にいてもイノベーションが起こせませんでしたということです。SAPにとって、城下町はドイツなんですが、既存事業の体系の中に新規事業を起こそうとしたんです。

これは失敗をしました。この絵が表してるように、「新規事業は既存事業より大きくなっちゃいけないよ。新規事業は既存事業の枠の外に出ちゃいけないよ。」という、圧力がかかるんですね。そして失敗しました。なので、分けたんです。

Place:場所とトップを切り分ける

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坪田さん:初めに既存事業はドイツ、新規事業はシリコンバレーという風に拠点を分けました。そして、トップの体系も分けたんですね。既存事業は社長が見て、新規事業は会長が見るという風に権限を分けました。

会長はドイツ人なんですけど、こっちに引っ越してきて、新規事業ばかりやって。そうすると、会長自らが新規事業だけをやるので、それは大きくなっていきますよね。

Place:新規を既存に投げ返す

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坪田さん:ここで終わるのは簡単なんですが、我々は今次なるチャレンジに移行しているんです。つまり、新規事業のモメンタムを既存事業側に投げ返して、既存事業の底上げをするということをやってるんですよ。

変わらなきゃいけないのは会社全体じゃないですか。このまま放っておくと、今は黄色い新規事業の部分が6割になってるので、ドイツ側から見ると「イノベーションはシリコンバレーだけで起きてればいいや」といった正しくない観念が生まれちゃうんです。

そして、やはり新規事業もいつかは陳腐化するので、ある程度定着したタイミングで既存事業と一緒に発展していくサイクルに乗せないといけないんです。

今、既存事業はおよそ12から18ヶ月のサイクルで仕事を回していて、新規事業は3ヶ月くらいで回しているんですが、シリコンバレーでは、とにかく確からしいものをたくさん作って、たくさんチャレンジして、たくさん失敗するというのが、この拠点4000人のミッションですね。

SAPシリコンバレーのミッション

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坪田さん:先ほど新規事業の拠点を別に分けたという話をしましたけど、僕らはこれを出島と呼んでいて、つまりオープンで、ある意味治外法権的なイノベーションを強要された場所にしているんです。

それをシリコンバレーに作ったというのがやはり大きいんですね。例えば「HanaHaus」。これはシリコンバレーで一番流行っているスタートアップの溜まり場で、それをSAP自身が持ってるんです。

あと「d.school」って知ってますか?スタンフォードの中にあるデザインを使ったビジネススクールだと言われているんですけど、これもSAPが作りました。シリコンバレーに移ってきたSAPの会長が資材を投じて、約35億円くらいをポーンと出して作った場所がd.schoolなんです。いわゆるデザイン思考の総本山ですね。

なので、スタートアップの溜まり場であるHanaHausもd.schoolも仕組みなんです。つまり、外の企業がシリコンバレーで受け入れられる仕組みというのを、ちゃんと用意したんです。

Process:デザイン思考

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坪田さん:最後はProcess。PeopleとPlaceだけではイノベーションって再現性がないというか、担保できないんですね。起こるかもしれないし、起こらないかもしれない。イノベーティブな人が同じ場所に集まって、同じ方向を向いて、同じステップで、同じスピード感で仕事を進めることが大事なんです。それがデザイン思考です。

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SiliconValleyWorkers編集長。愛媛県松山市出身。2016年、東京大学大学院工学系研究科化学生命工学専攻(相田研)修了。工学修士。現在はシリコンバレーのIT企業で仕事中。座右の銘:「現状維持は衰退のもと」

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