ドイツ企業SAPに学ぶ #後天的なイノベーションの起こし方

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デジタルエコノミー: 経営課題の不確実性

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坪田さん:これがまさにデジタルエコノミーそのものです。Uberって、価格設定のメカニズムが面白くて、みなさんよく需要と供給だって言うじゃないですか。いわゆる、周りにどれくらいタクシーが走っていて、どれくらいタクシーを待ってる人がいるかで価格が決まるという。

実はもう1つ要素があって、彼らはその人の乗車履歴を見てるんです。例えば、深夜に乗るのを繰り返してる人は、ずっとUberに高値をつかまされ続けるということです。要は、「この人はこのサービスにこれくらいの価値があると思っているだろう」とUberが勝手に判断するんです。

本来、タクシーに乗るというサービスの価値はお金を支払う側が決めますよね?この距離を移動するのにこれくらいだったら乗る/乗らないって。でも、Uberはそれが逆転していて、サービスを提供する側がそのサービスの提供価格を決めてるんです。

実はAmazonも同じことをやろうとしています。サンノゼにAmazon Booksという店舗があって綺麗に色んな本が並んでるんですが、普通の本屋さんとは違って本に値段が書かれてないんです。

みなさん本の値段を知りたいじゃないですか?でも、そのためには携帯のAmazonアプリを開いて、バーコードリーダーで本の背表紙のバーコードを読まなきゃいけないんです。めんどくさいですよね?でも、Amazonはこれをわざとやってるんです。

要は、みなさんの情報が欲しいんですね。2つ狙いがあって、1つは本の価格を時価にしたいということ。つまり、需要と供給を見て、次に新刊が出そうなタイミングで、今出てる本の価格を下げるわけです。これはわかりやすい話。

もう1つが面白くて、Uber同様、その人がその本に対していくらまでならお金を払うかという情報が欲しんです。今日の時点ではプライム会員かスタンダード会員かで値段を分けてますけど、将来的にはその人が目の前の本に求める価値をAmazonが勝手に判断して、「普通の本屋だと25ドルで売ってるけど、この人だったら40ドルでも買ってくれそうだから、39ドル99セントにしてサンキューセールにしよう」みたいな時代がやって来るかもしれないんです。だから、このAmazon Booksはみなさんが買わなかった本の情報が欲しいんです。

本の価格って下限は決まってるんですよ。これはAmazonにとっての仕入れ値。でも、上限は決まってないんです。本の値段って、出版社が勝手に決めた値段じゃないですか?どのくらい売れそうか、何部刷れそうか、市場にある競合の本がいくらで売られているかなどを考慮して。

でも、それは消費者によって違うんです。あと500円安かったら買ったのにってありますよね。Amazonはそれにチャレンジしてるんです。

例えば、ウェブの世界だと、カゴに入れたものを買わなかった場合、商品が高かったから買わなかったのか、それとも赤ちゃんが泣き出してちょっとあやしてたらサインアウトしちゃって買わなかったのか分からないんです。

でも、それがリアル店舗だと、わざわざバーコードを読み取って本の値段を見て、それで買わなかったら商品が高いから買ってないわけですよね?この人がこの本の中身に対して、いくらだったら買わなかったのかっていうのを、今後300店舗展開して取っていこうとしてるんです。

つまり、デジタルエコノミーというのは単にUberというIT企業がタクシー業界になりましたとか、配送業になりましたというだけの話ではなくて、行った先の既存プレイヤーを脅かしているということなんです。

これは多くの日本企業、つまり、これまでずっと既存事業を守ってくることに強みがあった日本企業を脅かしていますよね?だから、デジタルエコノミーというのは、企業経営課題を不確実にするものだと言われています。

インダストリー4.0

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坪田さん:これはインダストリー4.0と同じことなんです。インダストリー3.0までは、ざっくり言うと既存プレイヤーが死んだりしてないですよね。つまり、産業が新しく生まれて、そこで新しいビジネス方針が生まれているわけです。

でも、それがデジタルの場合、基本的に既存産業と新規ビジネス、この覇権を巡る争いなんです。そしてそれがミリミリ起きてるわけです。じゃあ、あなたはどちら側にいきますかと。

破壊的イノベーション

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坪田さん:これが最後の前置きですけど、破壊的イノベーションとはハーバード大学のクレイトン・クリステンセン教授が確立した有名な理論です。縦軸がお客さんにとっての価値で、横軸が時間です。

伝統的な会社というのは、時間をかけて徐々に価値を高めていくわけです。でも、この先にいきなり破壊的なビジネスモデルが交差していくんです。

その時に「じゃあ、あなたはいきなり黄色い軸に生まれ変われるんですか?」というと生まれ変われないですよね。自分たちの企業価値は既存事業で出来てるのでいきなり変われませんと。だから古くて重い伝統的な会社というのは、そこの二つの体制にすごく悩むわけです。

「このままいっても潰されちゃうけど、じゃあどうすればいいですか?」と。結論から言うと、どっちもやるしかないですよね。既存事業は既存事業で守りつつ、新規事業を自分たちで内製化することによって、この交差点を自分たちの中で作っていくと。だから、両輪経営って言われています。

それは新規事業を作るだけではないんです。いかに既存事業に注いだ労力をうまく新規事業作りに振り向けていくかという非常に難しい経営課題なんです。これが日本企業、ドイツ企業もそうなんですけど、伝統的な産業会社が直面している経営課題で、非常に深い問題なんです。

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SiliconValleyWorkers編集長。愛媛県松山市出身。2016年、東京大学大学院工学系研究科化学生命工学専攻(相田研)修了。工学修士。現在はシリコンバレーのIT企業で仕事中。座右の銘:「現状維持は衰退のもと」

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