ドイツ企業SAPに学ぶ #後天的なイノベーションの起こし方

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5年で売り上げを2倍に

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坪田さん:2010年頃まではSAPの典型的なイメージでもあるERPが売上の9割を占める会社でした。これは持って生まれた既存事業です。

しかし、この頃に生まれた新規事業が、2016年には売り上げ全体の6割を占めているんです。この5-6年の間にポートフォリオを6割見直したわけです。売り上げ120億ドル、大体1.5兆円だった企業が、この5-6年で売上を2倍の3兆円にしたんですね。

5年間で2倍の成長だとシリコンバレーでは遅いと言われるんですけど、ただ45歳の古くて重くて変わりにくい企業が、6割ポートフォリオを見直しながら2倍に成長したって、かなりすごいですよね。これがSAPが変わったと言われる1つの根拠です。もちろん売上、営業利益、時価総額、従業員といった中身の数字も全部倍になっています。

知られざるイノベーターSAP

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坪田さん:そうすると、イノベーティブな会社だと見られるようになりました。ちょっと割愛しますけど、この真ん中にある「Best Place to Work 2018 in USA」の通り、今SAPはアメリカの中で11番目にみんなが働きたいと思う会社なんです。古くて重かった会社が、イノベーティブで働きたい会社だと思われるように変わってきたということです。

SAPシリコンバレーに殺到する日本企業

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坪田さん:だから、日本企業もみんなそれを参考にしたいわけです。去年は年間で257社から1625人がSAPシリコンバレーに訪問しました。うち企業役員層が168人。

56%が新規なんですね。初めに言ったように、だからみんな知らずに来るんですよ。「SAPさんでしたっけ、SPAさんでしたっけ?」ってよく聞かれるんですけど「いやいや、うちは週刊誌じゃないです」って(笑)

やっぱりこのSAPのストーリー自体がすごく体系化しやすいものだと受け入れられてるんですね。そして、そこには日本とドイツが似てるという背景があるんです。

似た背景を持つドイツと日本

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坪田さん:要はドイツ企業がやったことは日本企業でも真似できるんじゃないかということです。ドイツは日本と一緒で世界トップクラスの産業大国で、3割が製造業と非常に重くて古い会社が多いです。あと、ドイツも日本と同じで終身雇用的な価値観を持っているんです。

これは考え方が古いということではなく、労働法が非常に発達しているので、人が辞めない、というかクビにできないわけです。じゃあ、そういう環境の中ではどういう人がリーダーになりますか?

やはり、失敗をせず、リスクを回避してきた人たちが上がっていくわけです。これって一見すると安定してるんです。別に悪いことばかりじゃないんです。昨日まで解いて来た経営課題が明日以降も続く。つまりずっと右肩上がりの産業構造の中に身をおいている企業というのは、とても安定しているわけです。

日本は1960年代から高度経済成長の波に乗って、60年近く「良いものを作れば売れる」という製造業をやってきました。だから、解くべき経営課題がずっと変わってなくて、右肩上がりの成長曲線だったわけです。つまり、昨日までの成功体験を知ってるリーダーがいれば、基本的にその時流に乗って上がっていけたと。

でも、今ってそうじゃないですよね?このあと補足しますけど、デジタルエコノミーという言葉があって、昨日まで存在しなかったような企業が、明日の自分たちの事業を脅かすことが本気で起きています。

そうなった時、やはり日本企業も変わらなきゃいけないわけです。日本企業の経営者の方とお話しすると、ざっくり意訳すると「スティーブ・ジョブスを待ってます」という人がいるんですが、今の体系ではスティーブ・ジョブスは出世しないんですよ。排他されちゃうんです。だから社長の目の前にはあがってきません。

なので、変わりにくい背景を抱えた産業だということを自覚しなくちゃいけなくて、その上で成長の因数分解をして、成長に必要な楔をしっかり体系化していくこと、つまりは意識的なイノベーションを起こすことが重要なんです。

これをイノベーションの型と言ったりします。ちゃんと型を作って、そのフレームに沿って地道にやっていく努力が必要なんです。だから、スティーブ・ジョブスがいつか現れて会社を変えてくれるわけではないんです。これが日本企業が抱えてる非常に大きな産業としての体系だったいうことです。

デジタルが評価される時代

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坪田さん:これは簡単にいきますけど、この表がドイツ企業の時価総額で、SAPはドイツで一番大きい会社ということです。2位がシーメンス。知ってる会社も多いですね。やはりデジタルという力をつけた企業が評価されてるんです。要は、デジタルというものが非常にパワフルな経営能力だと市場は見ているわけです。

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