脱出ゲームは広告媒体の1つ?
吉田さん:最初のビジネスモデルはチケットを売ってなんぼ儲けるかという、いわゆる普通のビジネスモデルだったんです。でも、これだけシリコンバレーでヒットして、下手したら1回に1万人来るようなイベントになったので、もうこのリアル脱出ゲームという体験自体が広告の1つと見なせるようになったんですよ。
編集部:どういうことですか?
吉田さん:リアル脱出ゲームを体験したことがある人なら分かると思いますが、例えば、テーマがドラえもんだったとすると、脱出ゲームを2-3時間体験した後には、みんなドラえもんきちがいになって出てくるわけです。
編集部:もうドラえもんのことしか頭にないわけですね(笑)
吉田さん:そう。つまり「あなたのコンテンツをテーマに脱出ゲームを作れば、何千人という人が一気にファンになりますよ」というわけです。
編集部:それめちゃくちゃ賢いやり方ですね!
吉田さん:10秒のテレビCMとか高速道路のビルボードに広告を出すのも良いとは思うんですが、みんな「ふーん」って感じだったり、高速道路だとシュンって通り過ぎて終わりだったりするじゃないですか。制作費もかなりかかるし。
なので、例えばゲーム会社さんが新しいゲームソフトを出すとすると、我々はそれをテーマにした脱出ゲームを作って、シアトル、サンフランシスコ、ロサンゼルス、ニューヨークなど全米でイベントを開催すると。今はそういう売り方を一生懸命してますね。
編集部:だから、先ほど仰られた新しい広告媒体としての使い方が出来ると。
吉田さん:そうです。「ビジネスモデルぶっ壊せ」という感じです!
今までリアル脱出ゲームとコラボした作品の数々
アメリカは50州50個の国だと思え
編集部:そのリアル脱出ゲームがシリコンバレーで流行ったのは、日米での商習慣の違いやマーケット感の違いもあるんですかね?
吉田さん:エンタメは運のところもあるので、方程式を出せと言われるとなかなか難しいですが、ただこれをシカゴでやってたらウケなかったとは思いますね。
よく「アメリカは50州50個の国だと思え」と言われてますが、これは中国とかでも同じで、「自分、中国は完璧なので任せて下さい!」と言ってる人がもうアウトなんですよね。というのも、中国みたいにあれだけ大きくて色んな都市があると、場所ごとにマーケット感も違うので。
例えば、アメリカだってカリフォルニア州なら合法的にマリファナを吸えるけど、違う州に行ったら吸えませんと。だから、「カリフォルニア州を1つの国だと思え」と言われていて、そのカリフォルニア州だけを見ても、ロサンゼルスならロサンゼルスの攻め方があって、サンフランシスコだったらサンフランシスコの攻め方があるんです。
編集部:じゃあ、シリコンバレーやサンフランシスコで脱出ゲームが流行ったのは、テック企業が多くて、チームビルディングを得意とする、もしくはコミュニケーションをしっかり取る人が多いから、文化にフィットしたんじゃないかと。
吉田さん:それに加えて、会社自身が「もう少しチームワークを鍛えてこい」という雰囲気があるんじゃないですかね。
よくGoogleはこんな感じ、Facebookはこんな感じという風に企業ごとにそれぞれの文化があると言いますが、そんな中でどうやってチーム、組織として同じベクトルを向いてやっていくかというのは彼らのテーマでもあると思うので、それがたまたま脱出ゲームとバチっと合っちゃったのかなと思います。