JPモルガン、ソニーというエリートキャリアを経て、アメリカでゼロから会社を立ち上げた男が気づいた本当のやりがいとは?

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本日のゲストは、新規事業のマーケティングに特化されたスタートアップ支援会社「Takeoff Point」で社長をされている石川洋人さんです。

JPモルガン、ソニーと歴史ある大企業でエリートキャリアを歩んでいた石川さんが、ソニーの出資で新しい会社をゼロから立ち上げることで、初めて気がついた仕事のやりがいや楽しさとは?

▼本記事の内容
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・Takeoff Pointの仕事
・会社を立ち上げて最初3ヶ月は仕事が何も無かった
・ソニーショックからソニーはどう変わったか?
・トップマネジメントからの学び
・今後のビジョン / メッセージ
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石川 洋人 (Hiro Ishikawa):
慶應義塾大学経済学部を卒業後、アメリカのJPモルガンの投資銀行部門に入社。エレクトロニクス・ハイテク業界のクライアントを中心に、クロスボーダーのM&Aや資金調達のアドバイザリー業務に従事。その後2003年にソニーに転職し、オーストラリア・台湾・韓国等での海外マーケティングを担当。2009年には、ソニーの社内留学制度を使ってミシガン大学でMBAを取得し、卒業後はCEO室に配属。トップマネジメントのスタッフとして、数々の構造改革プロジェクトや不採算事業の売却M&A案件を推進。その後、2015年10月にTakeoff Pointを設立。

新規事業のマーケティングに特化

編集部:早速ですが、Takeoff Pointはどんな会社なんですか?

石川さん:Takeoff Pointは、ソニーの出資で2015年10月に立ち上げた会社で、ソニーグループから生まれた新規事業やベイエリアのスタートアップに対して、新規事業のマーケティングに特化したビジネス支援を行っている会社です。
具体的には、日本で事業化された商品をアメリカでローンチし、マーケティング戦略の立案やオペレーションの構築、ビジネスパートナーの選定などを行っています。

新規事業のGo-To-Market戦略立案からオペレーションの構築、人材育成プログラムの提供も行っている。

編集部:ソニーの新規事業というと、どういったものを扱っているのでしょうか?

石川さん:ソニーの既存の事業領域外を「新規事業」と位置付けているので、Takeoff Pointで扱っているビジネスのジャンルは幅広いですよ。教育からファッションからスポーツまで。そして、今まではB2C中心でしたが、現在はB2Bの新規事業にもチャレンジし始めました。
どの新規事業にも社内起業家の”ファウンダー”がいて、限られた予算の中どうやったらそのビジネスが”Takeoff”するかを考えていて、うちはその “Point”になれたらと常に考えながらビジネスをサポートしています。

編集部:まさにTakeoff Pointの社名ですね (笑) 新規事業のマーケティングを専門としているとのことですが、新規事業と既存事業のマーケティングって全然違うのでしょうか?

石川さん:全然、違いますね。既存事業では、既に商品がフィットするマーケットがあるので、マーケティングは商品の魅力を「どう訴求するか?」といった方法論を中心に考えるのですが、新規事業のマーケティングでは、方法論の前に、まずは「誰にフィット」して、「何を訴求するか?」が分からなく、お客さまを通じた仮説検証のプロセスを繰り返しながら、段階的に見出していく必要があります。

どの新規事業もそうですが、新商品やサービスが、誰にどう受け入れられるかは、本当にびっくりする程ファウンダーの思い通りにはいかないのです。なので、その商品やサービスが誰にどうフィットするかを、少しずつ確認しながら進めていく必要があって、このプロセスを省略せずに短時間で繰り返すことで、限られた予算内で、リスクを分散しながら、特定のターゲットのみに集中的にマーケティングが行えるようになります。これが新規事業と既存事業のマーケティングの違いだと考えています。

編集部:たしかにそうなるとアプローチ方法が大きく変わってきますね! 石川さん自身は社長として日々どんなことをやられているんですか?

石川さん:何でもやっていますよ。資金繰りや戦略を考えるといった頭を使う仕事から、イベント出展などの営業活動、そして商品を梱包して出荷するような身体を使う仕事もやっています。

編集部:え、そういうのもやってるんですね(笑)

石川さん:やっていますよ、だって他にやる人いないですから(笑)  在庫を仕入れては、自分たちで梱包して出荷して。色んな所で営業して、商品を売っては、現金を回収して。お客様からの問い合わせがあれば対応して、返品があった場合は、検品して交換したりして。何でも屋です。(笑)

編集部:全部自分でやらなきゃいけないのはまさにスタートアップという感じですね(笑)

新規事業がゆえの悩み

Takeoff PointのオフィスがあるSony Interactive Entertainment LLC (サンマテオ)

編集部:ソニーと石川さんはなぜTakeoff Pointを設立しようと思ったのですか?

石川さん:ソニーでは、長年に渡って新規事業がなかなか育ちにくいという悩みがありました。ビジネスや商品アイディアをもった社員は沢山いて、例えば既存事業の技術を使って「こんな面白い新商品ができちゃった」とかいうケースもよくあるのです。

しかし、新規事業は「本業ありき」なので、本業が厳しいと新規事業には投資は出来ない。また、新規事業は市場からのフィードバックを細かく得ながら、必要があればカスタマイズをどんどんかけていける即断即決型で小回りがきく小さな組織体が望ましいので、大規模な既存事業の枠組みの中だと、新しい事業が芽生えにくいという問題があった訳です。

編集部:強力な既存事業があるがゆえの悩みですよね。

石川さん:そんな中、2014年に社長直轄で新規事業創出部という組織がソニーの中でつくられ、既存の事業領域外の新しい事業アイディアを集めて育成することを目的としたSeed Acceleration Program (SAP) という新規事業創出プログラムがスタートし、ここ数年で徐々にソニーの中で新規事業の種が芽生え易い「土壌作り」が進められてきたのです。

そして、アイディアを事業化する流れが出来たのならば、事業化された新規事業を育てる組織、新規事業に特化したマーケティングサポートや販促支援をする組織があった方がうまくいくのではないかということでTakeoff Pointは設立されることになりました。

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