Panasonicを使いこなす、圧倒的に。

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UberやAirbnbといったユニコーン企業が既存産業を脅かし、経営課題そのものが分かりにくくなっている今、現状維持を試みるだけの企業は衰退の一途を辿っている。

かつては世界を席巻していた日本の大企業も、社内ベンチャーやオープンイノベーションなど新規事業開発を加速させようと躍起になっている。

それは経営の神様、松下幸之助さんが創業した松下電気器具製作所(現・パナソニック)も同じである。

今日は、パナソニックのシリコンバレー拠点でIoT関連の新規事業開発を行う中村雄志さんに、シリコンバレーで新規事業開発をする重要性や大企業ならではのポテンシャルについてお伺いした。

▼本記事の内容 [全6ページ]
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[#1] シリコンバレーで新規事業のコア作り
[#2] 物理的な距離の重要性
[#3] パナソニックを使いこなす、圧倒的に

[#4] 人生観を変えた最初の配属
[#5] 生産技術者がMBAを取るということ
[#6] 今後のキャリア観 / メッセージ
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中村 雄志 (Yushi Nakamura):
2004年、立命館大学機械工学で修士号取得。学生時代にパナソニック(当時、松下電工)でインターンし、新卒でパナソニックに就職。車載デバイス工場の生産技術・品質改善、本社部門の研究開発・事業開発等を経て、2016年のSXSWにてIoTプロダクトのコンセプト『eny』を発表。2017年より渡米し、ゼロから組織を構築し、現在はパナソニックのシリコンバレー拠点にてIoT関連の新規事業開発に従事。2016年にグロービス経営大学院でMBAを取得。

シリコンバレーで新規事業のコア作り

編集部:今はどんなことをされているんですか?

中村さん:今は、ホテル・オフィス・工場向けに、ヒトにとって自然なインターフェースに拘ったIoTプロダクトを展開しようとしていて、その新しいビジネスのコアをシリコンバレーで作ろうとしています。

なので、シリコンバレーでプロトタイピングなどにより、プロダクトやビジネスの実証をして、「これでビジネスができるね」というコアが固まれば、あとはそのままアメリカで売りつつ、中国やインドなどに一部をローカライズして売っていくという感じを理想としています。そのフェーズでは、パナソニックのグローバルオペレーション能力を使います。

編集部:そのコア作りをシリコンバレーでやるというのは、やはり事業開発や事業展開のスピードを上げるためですか?

中村さん:そうですね。やはり、シリコンバレーからはじまる新しいトレンドが多い事と、スタートアップでも大企業でもとにかくスピードが日本よりも早いのでパナソニックとしてもそのスピードを使って早くビジネスを立ち上げたいというのはあります。その一部としてリーンスタートアップも使いながら進めています。

編集部:ちなみに、その展開しようとしているIoTサービスはどういったものなんでしょう?

中村さん:例えば、これは『eny』というIoTデバイスなんですが、ボタンを押す事で、その場の照明を消したり、クラウド経由で他のWebサービスと連携するようなプロダクトです。しかも、押す力で発電するので配線や電池が不要でメンテナンスの必要性がありません。

ワンタッチで日常生活の複数の動作を完了させるIoTサービス

編集部:おぉー、エネルギー発電素子が入っていると。

中村さん:そうです。エナジーハーベスターと言います。あとは人体通信デバイスという人の表層に電界を発生させて、それを使ってIDを認識させるようなデバイスもあります

具体的には、腕にデバイスを付けて、ドアノブや椅子にレシーバーを設置して、その人がドアノブに触れたり椅子に座ると、自動的に「今、中村雄志が座ったね」と認識したり、「中村雄志だけど土曜日だからドアを開けるべきではないね」といった判断ができるデバイスです。

編集部:では、人々の生活を便利にするIoTデバイスを創っていると。

中村さん:そうです。パナソニックのメカトロニクス事業部は、ユーザーが機器の操作に使うスイッチやタッチパネルなどを事業としてやっていて、その延長線上で、ヒトのインターフェースに関連するかなり尖った技術を持っています。

だから、そういった技術をうまく活かしつつ、ちゃんとユーザーの価値に繋がるモノを作って、それをIoTサービスとして提供することを進めています。

なので、ホテル・オフィス・工場というのも、コアはあくまでエンドユーザー「人」であって、結果的に今はそこにフォーカスしているということなんです。

編集部:まさにプロダクト・マーケット・フィットするところを探しているわけですね。それで、プロトタイプを作ってテストして、ダメならピポッドして展開されていると。

中村さん:そうです。まさにそれを今やってます。ソフトウェアだと作ったり変更するのにあまり時間もコストもかからないですが、ハードウェアだとそうはいかないので、そこをどうやるかがパナソニックの腕の見せどころですね!

Mountain ViewにあるPanasonicのオフィス

強みを活かすためのIoT

編集部:ちなみに、IoTにこだわるのはなぜですか?

中村さん:これはメカトロニクス事業部だけではなくパナソニック全体の話ですが、会社のスローガンが「A Better Life, A Better World」なんです。

なので、結果的にそれを実現するためにIoTサービスをやるケースが増えているだけで、IoTだけにこだわっているというわけでありません

編集部:あくまで目標を実現するための一つの手段としてIoTがあると。

中村さん:そうです。パナソニックは今日時点で売上が約8兆円の会社ですが、その売上のほとんどがハードウェアを売るビジネスなんですね。

もちろん、それは我々の価値を認めてくれるお客様がいるからなんですが。でも、だからこそ、そういう今あるハードの強みを最大限に活かす必要があるので、今はメカトロニクス事業部だけではなく、どこの事業部門もハードに加えて、ソフトウエアやデータを交えて、新しい顧客価値や顧客体験を創出する事をやってますね。

編集部:先ほども仰られたように、自社の強みを活かしながらというわけですね。

中村さん:そうです。だから、5年後、10年後はピュアなソフトウェアだけのビジネスがあって新しい強みができているかもしれないですが、現段階ではそこは分からないですね。

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SiliconValleyWorkers編集長。愛媛県松山市出身。2016年、東京大学大学院工学系研究科化学生命工学専攻(相田研)修了。工学修士。現在はシリコンバレーのIT企業で仕事中。座右の銘:「現状維持は衰退のもと」

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